手紙。

 

 

昨日、手紙が来た。

色の封筒に入った手紙。

右上がりにかかれた宛名。

差出人の名前を見ずとも分かる、いつも通りの手紙。

 

 

「手塚、嬉しそうだね。」

「そうか?」

「何か、いい事でもあったの?」

「まあ…な。」

 

自分では気付かなくてもついつい微笑んでしまう自分が居る。

 

 

 

『やっほう☆元気?』

 

いつも同じ始まりの文章。

 

『こっちは相変らず。でも、最近暑くてちょっと沸いてたりする(笑)けど。

 東京の方も暑いんだろうな〜。大丈夫?』

 

1ヶ月に1回欠かす事無く送られてくる手紙は、いつも俺を心配した文が並ぶ。

 

『そう言えば、都大会、近いんじゃなかったっけ?頑張ってね☆でも、あんまり無理

 しちゃだめだよ。』

 

俺は、お前の方がよっぽど心配だ。

色が白くて、華奢で。

少しでも無理すれば倒れてしまいそうなお前が。

 

『あと、今世界史が分からなくて困ってる(泣)確か、世界史得意だったよね?

 なんとか上手い覚え方ないかなぁ??』

 

何かと言うと俺に勉強を教わりに来ていたな。

出来た、と言った時の顔が、はっとするほど眩しかった。

 

「…ダメだな。」

 

昨日の手紙の事ばかり思い出して、練習に身が入らない。

1人ごちて、眼鏡をかけなおす。

飛んでくるボール。

 

『引っ越すんだ。私。』

 

突然の事に、俺は、

 

『そうか。』

 

としか返せなかった。

お前はくるりと後ろを向き、

 

『手紙は、絶対書くよ。何があっても。だから、出来ればでいいから…返事、書いてね?』

『ああ…。』

『…絶対、全国制覇って夢、叶えてよね!』

『分かっている。』

 

声が震えるのを必死に押さえている彼女が俺に投げてきた物は、リストバンドだった。

俺のものではあるが、昨日のそれとは違っていた。

内側に、彼女の刺繍が施されていた。

瑞々しい、四葉のクローバーの刺繍。

 

『それ…つけて、絶対勝ってよね。でも…無茶はしないでね。』

『ああ…約束する。』

 

 

「みんなお疲れさん、今日はこれで終わりにするよ。」

 

顧問の声で、皆が帰り支度を始める。

俺ははやる気持ちを押さえて、家路につく。

 

 

 

 

 

「出かけてきます。」

 

着替えてから早口でそう告げて、家を出る。

 

向かったのは、駅。

通学とは違う方向の電車を待つ。

 

何度時計を見ても、その針の進みは、いつもより相当遅い。

俺は、ぎゅっとポケットの中のものを握り込んだ。

 

それは、あのリストバンド。

 

まるで、彼女の分身のように感じる、このリストバンド。

 

 

 

 

がたたん……

ふと気がつくと、独特のリズムを刻みながら電車がホームへ滑り込んできた。

試合前でもさほど緊張しない俺の心臓が、急に早鐘を打つ。

 

ぞろぞろと改札を通る人込み。

様々な人々が入り乱れるその中に…彼女はいた。

 

切なくて、甘酸っぱい想いが胸を満たす。

 

 

「国光!!」

 

その声が聞きたかった。

手紙も、十分に嬉しいけれど。

 

俺は彼女の身体をそっと抱きしめた。

 

「…よく来たな…。」

「うんっ。…逢いたかったよ。」

 

「…俺も、逢いたかった……。」

 

 

色の手紙の返事。

書かなくてもいいだろう?

 

こうして…一緒に居られるなら。

 

 

 

 

 

Fin

 

 

 

 

 

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後足掻き

ごめんなさい。喧嘩売ってません。ホントです。名前が1回しか出てこないなんて

暴挙しでかしてゴメンナサイ。手塚好きですよ??凄い好きですが…。

この方が彼らしくすっきりまとまるかなぁと。友人にこんな誕生日プレゼントを渡す私…。

修行せねば…。

 2003・1・29   月堂 亜泉 捧

 

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