「ない…。」

 

部活が終わった後手塚が発した言葉は、皆をびっくりさせるのに十分なものだった。

部室に入って帰り支度をしようという所で急に手塚がせわしなく動き始め、

 

「俺の眼鏡が…ない。」

 

手塚の、くせっ毛の次に重要なトレードマークの眼鏡が!ってな事で大騒ぎ。

これが、全ての始まりだった。

 

 

手を繋いで

 

 

「そういえば今日練習のときしてなかったね。」

 

慌ててるのに不二だけがいつもの調子。くぁぁーっ、不二もさがしてっ!

と言いたいけど言えない(後が恐いし)

 

「あっ、ここ施錠されて無かったみたいっすよ?」

 

桃城が窓を差す。確かに、半分くらい開いてる。帰りのときは窓なんて開けないから、

練習しているときに開いてたことは確実…。

 

、お前施錠確認しなかったのか?」

 

ひいやああーっ、怖っ!眼鏡無くても手塚の怖さは変わらずっ!

あ、申し送れまして。私は。青学3年、男子テニス部のマネージャーなる

ものをしてます。

 

で。

 

部室の施錠は私のお仕事なのです…。

 

 

「…。グランド…。」

「私が一人で探すから!!お願いだから走るのだけは勘弁してっ!」

 

 

両手をすり合わせて懇願すると手塚は黙り込み、ちょっと考えて、

 

「わかった。」

「ちょっと手塚、一人だけは可哀相だよー、助けてあげにゃい?」

 

菊丸が助け船を出す。でも、

 

「だめだ。」

 

やっぱり…。サンキュ菊ちゃん。その気持ちだけ受け取っておくよ☆(感涙)

 

「じゃあな。あんまり無理して遅くなるなよ。」

 

大石が最後に部室から出てくときに言った。優しいねぇ。

 

「それにしても、何で手塚の眼鏡なんて盗むんだろ??別にフツーのやつだろうしさ。

 まさか、熱狂的手塚ファンの仕業!?うわっ、ストーカーまがいじゃない。」

「喋ってないで探せ、。」

 

後ろから不意にかけられた低い声。

 

「うぉわぁっ!手塚!帰ったんじゃなかったの!?」

「今の状態で帰ったら、家に着く頃には小さな壷に入ってる。」

 

小さな壷…。

 

骨壷…?

 

つ、つまり、見えないから事故る、と。

 

「じゃあ、手塚はもう一度部室の中を調べてくれる?私は外を調べるから。」

「…ああ。」

 

 

 

 

 

さて。

 

 

 

 

そうは言ったもののどこから探すかって事。

とりあえず植木とかを調べてみるけど見つかるのはゴミだけ。

もし盗んだならここにはないかもだし…。

だからって眼鏡が独でに歩いたとか言うなら、ゴシップ番組が食らいついてきそうだなあ。

なんて。はあ、現実逃避しても意味ないっての。

 

「ん?」

 

窓にもたれると背に伝わる暖かさがが。

 

「ふひゃっ、手塚…。」

 

窓を閉めてないところへ二人とも同時によっかかったから、こうなってしまった。

結構緊張ものだけど、今更何だから、そのまま話しかける。

 

「ごめん、手塚。私も目が悪いから気持ちよく分かるのに。うっかり鍵かけ忘れて…。」

「過ぎた事をあれこれ言ってもなにもならない。とにかく、日が暮れる前に

 見つけないとな。」

 

 

 

 

 

お前は悪くない。

 

 

 

 

そうとは言わなかったけど、意外にも暖かかった手塚の背中から、

そんな言葉が伝わってきたような気がした。

 

「…もうすぐ日が落ちる。仕方がない…。明日回しだな。」

「でも…!」

「ぼんやりだが見えんことはない。家にはもう一本ある。」

 

手塚、ちょっと嘘ついてる。私には分かるもん。

一年の頃からずっと見てきて、

 

 

 

癖だって、

 

 

 

 

食べ物の好みだって、

 

 

 

 

手塚のことなら全部分かる。

 

 

 

 

 

だって、ずっと手塚が好きで、手塚の事なら何でも知りたいって思ってた。

 

 

 

ううん。

思ってる。

 

 

 

今日走るんじゃなくて、探すって言い張ったのも、もし見つけたら

手塚にちょっとだけ、感謝されるかもって。

 

ま、私が悪いから可能性は低いケド。

はああ。神様が上から眼鏡を落としてくれたりしないかなあ…。

 

 

 

 

コツン

 

 

 

 

「んっ!?」

 

上から降ってきたのは間違いなく手塚の眼鏡。奇跡的にレンズは無事。

ただ、フレームが無残にひしゃげてる。

 

「手塚!!あった!眼鏡が降って来たよ!」

 

事情を言うと、

 

「…神様の仕業なんかじゃない。あれを見てみろ。」

「あっ…カラスの巣…。」

 

 

 

 

 

つまり。

部室近くの木にいたカラスは、光りものではある手塚の眼鏡を

開いている窓から入って盗み、巣に持ち込んだ。

でも眼鏡は多分、カラスの足にひっかかったかして落下。

んでもって、あーなったと。

 

「これじゃかけて帰れないな…。」

 

確かに。こんな眼鏡かけて帰ったら変な人だ。

ちょこっと見てみたい気もするけど…(笑)

 

「仕方ない。一緒に帰ろっか。」

「…は?」

「だーかーらー、一緒に帰ろうって言ってんの。」

 

手塚はただ、首を傾げるだけ。

もーっ、鈍いよっ、このテニスバカ!

でも、そんなとこが好きだったり…するんだけど。

 

「いいから、ほら、帰るのっっ。」

 

私は手塚の手を取って、テクテク歩き出した。

別に、手を繋ぎたいとかじゃなくってっ、

手塚が見えないから危ないと思って…っ。

 

 

なぁんか言い訳くさいけど…。

 

 

手塚の手ってマメだらけで、努力してるんだなぁって感じで、

でも、大きくて暖かい、男の子の手。

 

 

 

何だか、ドキドキする。

 

 

 

 

。」

「何?」

 

今絶対顔が赤いから、振り向かずに答える。

そうしたら手塚が自分から私の隣に並んで、そっと一言。

 

 

 

 

「これからも、こうして帰ってくれるか…?」

 

 

 

 

 

手塚って、時々すごい事を言うと思う。

 

しかも不意打ちで。

 

私はもう、響く鼓動を自覚せざるをえなかった。

 

 

 

あれ…手塚も、顔がちょっと赤い。

 

 

 

 

 

 

夕日のせいじゃ…ないよね、手塚…?

 

 

 

 

 

 

私は小さく、うん、と頷いた。

 

 

 

 

 

〜FIN〜

 

 

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後足掻き

何が書きたいんだー自分!?(謎)

もういいです。思いついたのは自分の眼鏡を紛失した時。(汗)眼鏡なくても

平気なんですけど、ただ新たに買うとバカ高い物なので、下手に無くせないです。

修理…手塚さんちはお金持ち(だろう)から、すぐ直してもらったのでせう。

しかし物好きなカラスだね。(笑)

 

 2002・11・11改  月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

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