沈黙の間に

 

 

 

「あ、お邪魔してまーす。」

 

ため息がまた1つ、俺の口から出る。

 

「もー、辛気臭いカオしちゃってー。会長がそんなんじゃ覇気でないでしょ?」

 

辛気臭い顔をさせているのはどこのどいつだ?

…言うとまた面倒だな。

 

「今日は何の用事だ。」

「今日はですねー。を待って、共に帰るという重大任務があるのです!」

「…そうか。」

 

何故ここまで元気なのか…。

いや、無駄に明るいのか。いつも疑問には思う。

俺は仕事を早々に片付けてしまおうと、デスクに座ってパソコンを立ち上げる。

 

「なんかさあ?残業に追われたサラリーマンだよね、今の手塚。」

「サラリーマンならもっと大変だろうな。」

「えー、今の手塚より忙しいなんつったら人間生きて行かれないね!」

「人間はそう弱いものじゃない。」

「そう?意外と弱いと思うけどな。ほらー、だってさ、目に見えないような微生物で風邪

 引いたりとかさー。今流行ってるじゃん、新型肺炎とか?」

「暇そうだな、。」

「ほえ?…そうだけどさ。悪かったね帰宅部で。」

「手伝え。」

「は??」

 

呆然としているの手に、書類の三分の一を渡す。

 

「それを清書するだけでいい。」

「いや、清書って、パソコン使っていいのー?」

「いいに決まってる。頼むぞ。」

「つか、頼んでなくない?むしろ強制でしょ。」

「いいから黙ってやれ。」

「うわー、恐い恐い。仕方ないなあ…。やってあげるよ。―、パソコン借りるぜ☆」

 

パソコンが立ちあがる音がする。

風の音にも似たそれは静かな騒音となり、俺の耳に届く。

 

 

カタカタとキーボードを打つ音がする。

パソコンを使いなれているらしく、そのタッチは軽快だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あのさー?」

「なんだ。」

「テニス、楽しい?」

「…ああ。」

「ふーん。」

 

 

 

 

 

「ねえねえ。」

「なんだ。」

「何で生徒会長やってるの?」

「クラスの皆から推薦で選ばれた。」

「嫌じゃなかった?」

「推薦で推されるという事は、それだけ信頼されているという事だ。その信頼を裏切る

 わけにはいかない。」

「…ふーん。」

 

 

「…手塚って…窮屈だね。」

「……。」

「凄い、窮屈な生き方。」

「…そうか。」

「いつか、息が詰まっちゃうよ。」

「…そうかもな。」

 

「ねえ…。」

「終わったのか?」

「まだだけど…。」

「喋ってないで早く終わらせろ。」

「うー。分かりましたー。」

 

 

 

「…あのさ。」

「……。」

「今度、テニスの試合見に行ってもいいかな?」

「…別に、誰でも入って構わないからな。」

「そういうことじゃ……ま…いいや。」

 

「まだ終わってないのか?」

「うーん、あともうちょっと…。」

「俺は終わったぞ。」

「嘘っ!なんでそんなに早いのよ!」

は喋りながらやっているのがいけないだろう。」

「手塚だって答えてたじゃない!?」

「その間手は動かしていた。」

「しょうがない、フルパワーで終わらせる!」

 

先ほどとはうってかわって早い仕事。

細く白い、女性らしい指がさらさらとキーボードの上を滑る。

不意に、その手が止まる。

 

「私じゃ、手塚を癒す事は出来ないのかな?」

 

何を言いたいのか分からない。

 

「…。」

「はあぁ。無力は辛いな。」

 

は無力ではない。

でも、俺の言いたい事と、が言っている事では食い違いがあるような気がして、

結局、何も言わずじまい。

 

「お終―い。はい、会長さん。」

「…助かった。」

「そうじゃないでしょ。」

「?」

 

ぴっ、と俺の鼻先に人差し指を向けて、

 

「ありがとう、でしょ!」

「…すまない。」

「んー。…まあいっか。ねえねえ、手伝ったんだから何かご褒美ちょうだいよ。」

「褒美?」

 

褒美と呼べるようなものなど、ここには何も無い。

あるのはせいぜい茶菓子。

 

「もー、鈍いなあ。」

…っ!?」

 

 

 

 

何も言えない…沈黙の時。

 

 

俺は何が起こったか理解するのに時間を要しすぎた。

 

 

 

 

 

「…ホント、鈍いんだから…。」

 

そっと離れる

と、丁度ドアが開く。

 

―☆仕事終わったから帰ろうー。」

「え、あ、うん!」

「あ、会長、お疲れ様でしたー。」

 

 

 

一瞬の事に訳が分からず戸惑っていると、書類の中から少し小さめの紙がぱさりと落ちた。

そこには、少し丸めの文字が並んでいた。

 

 

 

――― を待つためだけに、生徒会室にいるんじゃないんだよ?

        そこのところ、気付いて欲しいなー?会長さん?

    今度は帰り、一緒に帰りなさい!!(命令☆)

                               より☆―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…!」

 

俺は訳も分からずドアを急いで開けていた。

 

「遅いよー?ホントにと帰りそうになった。」

 

「…はあ…。」

 

俺はまた盛大にため息をつく。

 

「ちょっともー、辛気臭いなー。人の告白への返事はよ?」

「…帰るぞ。」

「え、あっ、待ってよー!」

 

 

と帰る道。

 

今までに感じた事のない、沈黙が埋まって行く充足感。

 

 

誰にも見られなくて良かったと思う。

 

 

きっと、嬉しそうな顔だったと思うから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

========================================

後足掻き

わー、手塚じゃねえ…こんだけ書いておいてまだニセが書けるってある意味才能?(殴)

手塚欠乏症な枉賀ちゃんに半お捧げ。コピーだろうがなんだろうが好きにお持ち帰っ

ちゃってください。こんな手塚で宜しかったら。あ、他の方は転載許可お願いしますよ?

まあ、こんなヘボいの載せる人はなかなかいないでしょうけどね!(泣笑)頑張ろう…。

 2003・4・18 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送