「なぁなぁ、一緒に帰ろうぜ〜。」

「ああ、いいぜ、行こ行こ。」

 

友人同士で帰路に着く。勿論、その間に寄り道を含めつつ。

それは学生ならではだと思いながら、俺はぼんやり下駄箱を眺めた。

 

かくいう俺も、一緒に帰る約束をした相手を待っているのだ、人の事は言えないが。

 

 

「ごめん、陽介。遅くなった?」

「いんや、大丈夫。」

 

声をかけてきたそいつに軽く返事をしながら、壁から身をはがす。

 

「で、どうよ?なんか言われた?」

「んー…。特には。それにほら…春には向こう帰んなきゃなんないし。」

 

さらり、と言われた事実に、分かっていながらもなんとなく胸が痛んだ。

来年は、今年やったこいつとのバカももうできなくなるんだな、って再自覚したから。

でも、表に出すのは嫌だからごまかしてみる。

 

「そ、っか…そうだよな。つかお前もホント大変だよな。一年ここ通ったのに、

 また向こうで編入しなおしだろ?しかも三年で。」

「うん、めんどくさい。」

「うわ、そんだけ!?もっとこー、俺と離れる感慨とかないわけ?」

「感慨って…そうだなぁ。」

「考えるな!感じろよ!」

「それ、里中の好きな言葉だよ。うつった?」

 

くすくすと肩を震わせて、こいつ特有の小さな笑いをする。

実は爆笑女王、天城と違って、本気でおもしろくてもリアクションは小さい。

いつも冷静沈着で、周りを見て判断ができる俺らの「リーダー」。

 

でも、実は誰より繊細で、思い切り感情的になりたいのを必死で抑えている人間だった。

 

 

 

 

 

 

それを知ったのは、あの時。

 

 

 

 

『まだ、聞きたいことがある…。』

『こんな時まで何悠長な事言ってんだよ!お前はこいつが許せるのかよ!?』

『…陽介、落ち着け。』

 

何度も何度も、この不可解な事件に巻き込まれてから言われてきた『落ち着け』の言葉。

17年しか生きてない俺たちが、とてつもない事に巻き込まれて。

 

誰だって不安だし、焦るし、我を見失う。

 

でも、こいつは俺を落ちつかせようとその言葉を言うと同時に、

自分の動揺を抑えていたんだと、その時ようやく気づくことができた。

 

 

小さく、本当に小さく震えていた身体。

 

 

 

 

 

 

 

瞳の奥に隠した、激情の焔。

 

 

 

 

 

それを全部押し殺して、冷静に状況を判断して何が一番必要なのかを考える。

 

 

並大抵の事じゃない。

 

 

 

 

強い、と思った。

 

 

 

 

 

 

そして…そんな危なっかしいこいつを、支えてやりたいと思った。

 

 

 

 

「さて、かったるい進路話とかはやめとこーぜ。今日はどうする?」

「今日は…やっぱり愛屋じゃない?惣菜大学はこの間行ったし。」

「マジで?うーん、俺今金欠なんだよな〜。」

「バイク買うお金多少拝借すればいいじゃん。」

「ヒデッ!里中がクマの服買うのでツケた分結構痛かったんだぜ!?」

 

たった一年だけど、ものすごい濃い一年。

お互いのことを、こんなにも深く知るだなんて思ってもみなかった。

 

最初から、こいつには全部ぶっちゃけたんだから、それもそうなのかと思うけど。

 

「んじゃ、ゴチになりまーす。」

「はいはい。召し上がれ。」

 

結局愛屋に行きたがったのおごりってことで決着がつき、俺らは肉丼を食い始める。

 

「なぁ、もしもだけど、お前じゃなくてほかのやつが最初にペルソナ能力に目覚めて、

 のシャドウが出たらどんなだったんだろうな。」

「…俺のシャドウか…自分の嫌なところとか、否定したいところの具現だろ?」

「そうそう。」

 

肉丼を口にしてしばらく咀嚼しながら考え、飲み込んでからしばらく経ってきて返った言葉。

 

「……そのまんま?」

「へ?」

「俺、自分がそんなに腹綺麗だと思ってないし。そこまで隠せないからだだ漏れてる。

 だから、そのまんまな俺が出てくるんだと思う。」

 

さも当然のように言って、また肉丼を頬張るを横目で見て、やっぱり凄いと思った。

 

「やばいわ、俺マジお前に惚れ直した。」

「…肉丼の食いっぷりに?」

「ちげーよ。」

 

軽く頭を小突いてやると、『おごってやらないぞ』と言いながら、その瞳は笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「あれ、奈々子ちゃんいないのか?」

「うん。今日は出かけてるから。」

「そっか…ずっと事件が続いてたから堂島さんもゆっくり奈々子ちゃんに

 かまってやれなかったもんなぁ…で、お兄ちゃんはおいてけぼりなわけだ。」

「おいてけぼりなわけじゃなくて、辞退しただけ。」

 

階段を上がり、何度か来たの部屋に入る。

革張りのソファに小さな座卓、アルミラックと木のタンス。

どれもこれも統一性のないちぐはぐなものだけれど、妙にらしい部屋だ。

 

「それに今日は、陽介と二人でいたかったし。」

「…お前さー、ホンット天然っつーか…考えて発言してる?」

「うん。」

 

きょとん、とした様子でこちらを見てくる。

こんなに無防備だと、本当に困る。

 

どんなに俺が情けない所をさらけ出しても、こいつに嫉妬しても、

見放すどころか、『頼りにしている』とまで言われた。

 

だからなのかもしれない。

 

いつの間にか、相棒として以上に、こいつを支えてやりたいと思うようになった。

 

「いいか?あんま二人でいる時にそういう迂闊な発言するなよ?いくら紳士な俺だって

 いつまででもそうとは限らないんだからな?」

「あれ…陽介って紳士だっけ?りせのマヨナカテレビの時、あんなに興奮してたのに…。」

「っ、あれはあれ、これはこれだっ。」

 

俺はの腕を引っ張り、抱き込む。

まだ少し負けている身長を補うため、そのまんま後ろの布団へと引っくり返る。

 

「あ、ぶな〜…。」

「いいか?四月過ぎたらこうはいかないんだからな?」

「俺がいなくて…寂しいからってまた泣くなよ?」

「…ばーか。」

 

ごちっ、と少し痛いくらいにおでこをくっつけ、どちらからともなく笑い合った。

 

「どうしても寂しくなったら、会いに行く。」

「…いいよ。俺がこっちに来るよ。」

「なんで。」

「…何となく、陽介が寂しがってたら、分かりそうな気がするから。」

 

 

 

俺も、分かりそうな気がする。

 

 

 

こんなにも誰かの傍が心地いいなんて、思ったこともなかった。

 

分かり合える相手に、初めて出会ったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

俺の隣はの隣は俺。

 

 

 

 

 

もう決まってんだから、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

…これは主花か?いや、花主っぽくなったような気もしないでもないけども。

とにかく、デート→おうちへなだれ込みな恋人ルートで(笑)

なんかうちの4主、結構飄々としてるなぁ…皆のイメージ崩してなければいいが…。

      2009・3・30  月堂 亜泉 捧

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