思えば、あの日々は平和だったのかもしれない。
ただ過ぎ行く時を見送って、安穏と生きていればよかった。
哀れみも、同情も、自分には関係のないことだった。
篭の中に、過ごしたあの日々。
自分を閉じ込めるその篭を、好んでいた…。
そうではないけれど。
自分はただ、そこにいるしかなかった。
そして、そこが閉じられた空間である事を、知らなかった。
そこが、自分にとって最上の「幸せ」だったから。
時折与えられる手に、甘え、媚びて、すがりつく。
弱い自分は、そうしなければ一瞬で潰されてしまうから。
でも、いつしか「それ」を知ってしまった。
差し延べられる手が、どれほどまで自分を受け入れてくれるのか。
わざと、傷をつける。
それでも、好きだと…手を差し延べて欲しかった。
結果は、放り出されただけ。
広くて寒い世界に。
それを、望んでいた…。
それしか、望めなかった。
何かを求めて、篭から外へ。
何かを失い、外から篭へ。
そうして、本当に寒くなった時は。
篭の中、ひっそりと、1人きり。
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