運命?のイタズラ。

〜私達はこうして出会ってしまった〜

 

 

「リョーマーっ!!」

 

大きな声はただ反響するだけで、期待したような返事はない。

 

「起きないねぇ…。奈々子ちゃーんっ。」

「あはは…。」

 

奈々子は苦笑を浮かべているしかない。何せほぼ毎日こんな感じなのだから。

 

「ったく、うちのバカ弟…部活で疲れてるくせに夜ゲームなんてやってるから。」

「いいじゃん、別に。」

 

と、突然本人登場。

越前 リョーマ。青学入学時からテニス部噂のルーキーと騒がれている張本人だ。

 

「よくないわよ。それで朝練遅刻して、手塚君に怒られてるでしょうが。」

 

こちらは越前リョーマの姉、越前 

バドミントン部に所属しているが、テニス部のマネージャーも兼任している。

 

「…それで、姉さんになにか迷惑かけた?」

「私が恥をかく。テニスしか能がなくて困るわ。」

「テストの点はいい方だけど?」

「先生のブラックリストに載っちゃう授業態度じゃあねぇ。」

 

リョーマはテニス部内でも生意気な口を利くやつ(それでよく睨まれる)なのだが、

姉であるの方が一枚も二枚も上なのである。

 

「ふ…二人とも、朝ご飯冷めちゃうよ?」

 

そして、そんな姉弟に板ばさみなのが従姉妹の奈々子。

この日も、いつもと同じように日常が過ぎて行く…はずだった。

 

 

 

「おはよーございまっす。」

「おはよう、ちゃん。」

 

一番に話しかけてきたのは不二。

 

「弟君は?…また、置いてきた?」

 

「うん。多分もうすぐ来る。もー、大会の日にギリギリまで寝てるなんて、いい根性

 してるわよ。」

「はははっ、越前らしい。」

 

桃城がそう言うと、

 

「無駄に父さん譲りの度胸とテニスの腕はあるのよ。」

「手厳しいよにゃー、ちゃんは。」

「あ、来たみたいだな。」

 

大石が指を差すと、その方向にはいつものキャップをかぶったリョーマの姿があった。

 

「これで全員揃ったな。…行くぞ。」

 

手塚が声をかけ、青学テニス部は地区大会会場へと乗りこんだ。

 

 

 

 

 

「…まだまだだね。」

 

他校の試合を見ながら、ファンタを飲んでいたリョーマの台詞である。

それを隣で聞いていたは、クスッと笑う。

 

「何だよ。」

「いやあ、またその口癖が出たな、っと思って。父さんからうつったんでしょ?」

「―――――…。」

 

リョーマはそれはそれは嫌そうな顔をしている。

それを分かっていつつも言葉を続ける

 

「ま、あれだけ毎日のように馬鹿にされてちゃ、うつりもする、か。それに、なんだ

 かんだ言っても、実の親子だし?」

「バカ親父の話はすんな。」

「んまっ、命令形で言ったわね、姉に対して!まーったく、生意気なお口ねー。」

 

は両手でリョーマの頬をつねる。

 

「ひたひ、ははへ、はかあへひ。(痛い、放せ、バカ姉貴。)」

「んー??“放して下さい、お姉様”デショ?」

「――――――…ははひへふははひ。」

 

不服極まりないといった声(にならない声)で謝るリョーマ。

いじめたおしたは優越感で満足そうに

 

「まー、心のひろーい私ですから?許してあげよう。…あ、赤くなっちゃった。」

「…痛いし。」

 

つねられた部分を少々大げさに撫でてみせる。

 

「あ、ウソ!?じゃあしょーがないなぁ…。」

 

は赤くなったリョーマの両頬に軽くバードキスをした。

 

「っ……!!」

 

更に別の意味で赤くなるリョーマ。いつも冷静な彼とはいえ、こうなる事は全くの予想外

で驚いたのだ。人が少ないと言っても、公衆の面前。

 

「よくやったげたじゃーん?」

「いつの話だよっ。それに、ココはUSAじゃないんだぞ。」

「分かってるよ。」

 

と、リョーマの視界に人影が見えた。

 

「おや…越前君。こんなところに居たんですね。」

 

少々男性にしては高めの声。

そして、一言で分かる彼の折り目正しく、そして慇懃無礼な性格。

 

「あー…あんた、誰だっけ。」

 

他人にあまり興味を示さないリョーマは、いちいち他の学校の生徒まで覚えてはいない。

覚えているとすれば、よほどテニスが強いか、むかつく相手ぐらいのものだ。

 

「んふっ。忘れたんですか。聖ルドルフ3年、観月はじめ、ですよ。」

「初めまして、観月さん。」

 

がぺこりと頭を下げる。

 

「初めまして。以後お見知りおきを、越前 さん。」

「へ?」

 

面食らったようなの表情を見て、観月は満足そうに独特の笑みを浮かべた。

 

「失礼ですが、貴方のデータも取らせていただきましたよ。んふっ。」

「…リョーマ、この人って乾君みたいね。データマンなんだ。」

さん。」

「はい?」

「今回、何故僕が貴女のデータを取ったか分かりますか?」

 

はしばらく考えてから、ふっと顔を上げて、

 

「リョーマのネックを調べるため?残念だけど…。」

「貴女に、興味があるからですよ。」

「………はあ?」

 

自分の台詞を遮られ、観月から聞いた言葉が思いがけぬもので、は唖然としてしまう。

と、今まで黙って話を聞いていたリョーマが、ずいっとを庇うように前へ出た。

身長差があるため観月を少々見上げる形になるが、その目は鋭く、威嚇の効果は十分だ。

 

「悪いけど、俺の姉さんからかわないでくれる?」

 

観月はそんな睨みをものともせず、余裕の表情だ。

 

「からかってるつもりはないですよ。僕は正直なところを言ってるんです。

 それに…今日逢えたのも何かの縁ですし。仲良くしましょうね、さん。」

「はぁ…それはいいんですけどね、観月さん。」

「はじめ、でいいですよ。」

「じゃあ……はじめ君。」

「何です?」

「リョーマをいじめないで。」

「!?」

「これはこれは…。」

 

の台詞にはリョーマはもちろん、観月すらも少々目を見開いた。

 

「何かよくわかんないけど、リョーマがイヤそうな顔してるし。――無愛想で生意気

 だけど、リョーマは私の大事な弟だから。リョーマのいやがる事はやめて。」

「姉さん…。」

 

真剣なの瞳をじっと見つめた後、ふと視線を外して

 

「んふっ…。いいお姉さんですね、越前君。今日はさんに免じて、去りますけど…。

 僕はあきらめませんよ。今日の事で、ますますさんに興味が沸きましたから。」

 

満足げに立ち去る観月の後ろ姿をねめつけてから、リョーマはの方を向いた。

 

「カッコイイ人だったねえ、リョーマ?」

「へぇ…姉さん、あんなのが好みなんだ?」

「ううん。別に好きとか嫌いとかじゃなくてさ。…あ、安心しなよ。リョーマも十分に

 カッコイイって。なんせ私の弟だもんね。」

「…。」

 

リョーマは背を向けててくてくと歩き出した。

 

「あっ、ちょっとなによリョーマ!言いたいことあるならちゃんと言いなさいよね!

 男らしくないぞーっ!!」

「別に…。」

 

リョーマは言いたくても言えなかったのだ。

の、自分を思ってくれる一言一言がとっても嬉しい、という事など。

 

自分の思い通りにならない、淡く切ない想いを、抱えてしまっているのである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

うわぁぁぁー。どうしよう、どうしよう、どうしましょう!?(聞くな。)

えと、リョーマVS観月です、これでも!!ゴメンナサイ。(平謝り。むしろ板謝り。)

主人公はリョーマの姉です。で、シスコンリョーマさんな訳です。まあ、追々

私の好きな分岐制ドリムへと変貌して行くのでしょう。リョーマも観月も選び放題(?)

という感じで。とりあえず出会いシーンだけですが、これからも続けていきます。

連載、と言うよりシリーズ、と言った方が的確でしょうか。というわけで、もうしばらく

お付き合いくださいませ。

 2002・11・22 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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