うちの姉さんはちょっとだけ…いや、かなり鈍い。

で、口が達者。

で、ちょっと天然ボケ入ってる。

 

だけど、そんなところも憎めないくらいに可愛い。

…口に出しては言えないけど。

 

 

 

運命?のイタズラ。

〜どうしても譲れないヒト。〜

 

 

日曜日の朝なのに、何か物音がする。

皆を起こさないようにと注意を払っていても、なにかしら落としたりして音を立てる。

あれは…姉さんだ。

…でも、どこへ行くんだろう。

昨日は出かけるなんて言ってなかったのに。

俺は日々の練習で疲れて言う事を聞かない身体を無理矢理起こし、下へと降りていった。

 

「姉さん。」

「ん?あ、リョーマ、おはよ。今日は早いね、休みなのに。…あ、ひょっとして

 起こしちゃった?」

「まあね。」

 

そうじゃない、と言えない自分がもどかしい。

 

姉さんを見ると、ボーイッシュながらもどこか可愛らしくコーディネートされた

服を着ていて、顔には軽く化粧しているけど、気にならないくらいにナチュラルで、

いつもより数段可愛かった。

 

「今日、どこ行くの。誰と。」

「何を突然、母さんみたいな事…。」

「いいからっ。」

 

姉がナンパされるのを嫌がる弟なんてなかなかいない。

でも、姉さんはホントに可愛いから。

姉さんをその辺の軽い男になんて絶対渡さない。いや、軽い男じゃなくても渡さないけど。

 

「えと、今日の予定は、楓ちゃんとショッピング。お昼食べてー、その後カラオケかな?」

「楓って?」

「早川 楓ちゃん。リョーマと同じ一年生だよ。ほら、この間の都大会以来仲良く

 なって☆」

「…聖ルドルフの…。」

「うん、そう。よく覚えてたねー。テニス上手いんだよね、すっごく。あ、だから

 リョーマも名前を覚えてたの??」

「別に…。」

 

聖ルドルフ…つまりは『あれ』との接触があるってこと、だよな。

 

「俺も行く。」

「はあっ??なに考えてんのリョーマは。楓ちゃんと行くんだから、ショッピング

 だって女の子ものしか見ないよ?」

「『あいつ』が来そうな気がする。」

「あいつ?…ああ、はじめ君?来たからって問題ないでしょ。同じテニス部の先輩後輩

 だから、仲いいかもだし。ほら、私だってテニス部の皆と遊びに行ったりするじゃん?」

 

何で姉さんはこうも鈍いんだろう…。

うちの先輩たちは俺が牽制してるから姉さんには手を出さないほうがいいって

分かってるみたいだけど、あいつは逆に何とかして俺から引き離そうとしているみたい

だし。絶対危ない。

 

「俺も行くっての。」

「だからぁ、友人とのショッピングに弟連れていくなんて変でしょう。」

「俺がエスコートする。」

「えすこぉと?うわー、リョーマの口からそんな紳士的な言葉が出るなんて。

 明日は槍が降るわ。」

「……行く。」

 

姉さんは根負けしたらしく、大きくため息をついた。

 

「なんか知らないけど…仕方ないねー。一度言い出したら聞かないんだから。

 えーっと、楓ちゃんにメール送らないと…。」

 

 

 

―――ゴメン!うちの弟連れてく。邪魔させないから、お願いね(^o^)―――

 

 

「観月さん。観月さんのシナリオ通り、越前リョーマがついて来るみたいですっ。」

「やっぱりそうですか。…楽しくなりそうですね…んふっ。」

 

 

 

「楓ちゃん☆ゴメン、待った?」

「いいえ、大丈夫ですよ。」

「突然バカリョーマがついて行くって言うから…。

 ほら、リョーマ。楓ちゃんに挨拶して。」

「…ちわっす。」

「こんにちは。…あ、私にも連れがいるんですけど、いいですか?」

「うん、いいよー。私も勝手にリョーマ連れて来ちゃったし。」

 

まさか。

すごくイヤな予感がする。

俺の予感って外れる事が少ないから…。

 

「お久しぶりですね、さん、越前君。」

 

うわ…予想的中。

これだから姉さんを一人で行かせるのはイヤだったんだ。

 

「こんにちは、はじめ君…うわあっ!」

 

絶対に姉さんは渡さない。

意思表示の為に、姉さんの腕を掴んで俺のほうへ引き寄せる。

 

(やはり、さんを盗られる事に抵抗して…いえ、嫉妬していますね。

 …んふっ。シナリオ通りです。越前君。残念ですが僕は、君の義兄になる事が

 もうすでに決定しているんですよ…。)

 

「何を突然。引っ張ったら危ないでしょうが。今日ホントに変だよ?リョーマ。」

「別に…。」

 

本当の事を言えたらどんなにいいか。

でも、言ってしまったらそこで終わりだと思う。

だからずるずる引き摺っていくんだ。

 

「まあ、とにかく早く行こう?楓ちゃん。あ、あそこのお店可愛いー☆」

 

 

 

 

姉さんと早川って人が買い物をしている間。さり気なく、前を行くムカツク男に、

 

「あんた、どういうつもり?」

「何がです?」

 

この余裕さを見てると、すごく腹立つ。バカ親父の余裕さとはまた違うけど、

やっぱりムカツク。

姉さんを狙ってるってところあたりからして、気に入ってないけど。

 

「姉さんのショッピングなら、俺がいないとでも思ってたわけ?」

「いえ。僕のシナリオでは必ず越前君が来る事になってましたから。」

「…本気なわけ?姉さんの事。」

「ええ、本気です。」

「姉さんは分かってないよ。」

「必ず振り向かせてみせますよ。…それにしても、実の姉に恋心を抱くなんて、

 苦労人ですね、越前君。」

 

……ふうん。

 

「まだまだだね。」

「!?」

 

恋心だなんて、そんな軽い言葉で言えるほどじゃない。

 

敵わぬ強い相手ほど燃えるように。

 

必ず叶わない恋だからこそ、身を焦がすような熱い想いが全身を駆け巡る。

それは、誰にも分からない。

知られてはいけない。

 

「何があっても、姉さんは絶対に渡さないから。」

「リョーマー??」

 

姉さんの呼ぶ声がする。

 

「今行く。」

 

姉さんは大きな袋を右手に持っていた。

気に入った物があったらしく、その顔はどことなく嬉しそうだ。

 

「はじめ君と何話してたの??」

「別に。」

「言いなさいよねー。可愛くないなあ。」

「男が可愛いって言われても嬉しくない。」

「愛想がない可愛くなさは人付き合い苦労するよ?」

「…。」

「はじめ君ぐらい丁寧な物腰で愛想があるといいのに。我が弟ながら…。」

「あんなヤツが弟だったら気持ち悪くない?」

「まあ、弟って感じじゃないかなー。」

「じゃ、何?」

「んと…。」

 

内心はすごくどきどきしている。

“恋愛対象”なる言葉が出てきたら、今すぐ姉さんを連れ去ってしまうかもしれない。

 

「家庭教師の先生かな?私よりずっと大人びてるし、教えるのも上手そう。」

「ふーん。」

 

心の中では大きく安堵のため息。

本当の気持ちが言えなくて、苛々する。

でも、打ち明けられない。

 

「リョーマ。」

 

ひょいと覗きこむ顔にさえどきどきして。

…想いってどれぐらいまで抱えていられるんだろう。

この想い、いつか打ち明ける時が来るんだろうか。

 

「…まあいいや。」

「???」

 

あとで考えよう。

考えるとなんだか疲れそうだし。

 

今はまだ、姉さんが…。

 

 

 

好きだという気持ちだけ、分かっていればいいや。

 

 

 

 

 

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後足掻き

リョーマVS観月第2弾っす。うーん、ザッツ微妙。やっぱりリョーマを書くのは苦手

みたいです。別人28号。主人公なのにねぇ…。早川 楓ちゃん出してしまいました!

分かる人には分かるこのネタ。彼女個人的には好きです。ああ言う高飛車なのにどこか

空回りするあたりとか…。今回は出番少ないですが。多分まだ続きます。そしたら沢山

出てきますので…。続きをお楽しみ(?)に。

 2002・11・26 月堂 亜泉 捧

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