神出鬼没というより、狙いすました様にそこに現れる。

 

彼女は運命だと、そう言った。

 

そんな彼女が隠しているそれは、きっと重いのだろう。

…心にかかる重圧が。

まるで、あの女‐ヒト‐のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンダー・ザ・スカイ

   青紺の扉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長!」

「何だ。どうかしたか?」

「えっと、そのですね、実は今、砦の入り口に女が来ていましてですね。」

「女?」

 

慌てている門番の兵は早口で言う。

俺が聞き返すと幾分落ちついたのか先程よりゆっくり話し始める。

 

「はい。身なりは普通の旅人で、砦の中を見せてくれというのです。」

「随分物好きな女だな。」

「ハイランドの密偵とかでしょうか。」

「いや、違うだろうな。それならもっと上手いやり方はいくらでもある。

 大方道に迷ったか宿探しか…そんなところだろう。」

 

ビクトールはボサボサの頭を掻き回してからおもむろに立ちあがる。

デカイ口を遠慮なく開けて欠伸をすると、

 

「さて。じゃあその物好きを見に行くとするか。」

「…そう言うお前も物好きだな。」

「俺は好奇心旺盛なんだよ。お前も気になってんだろ?フリック。」

 

俺は何も答えずに、のんびりと立ちあがってドアに向かう。

こんな職業をやっているだけあって、好奇心は確かに強いかもしれない。

だが、何故かこの腐れ縁…ビクトールと一緒に居ると変わった事態に

遭遇しやすいのだから、そうなってしまうのも仕方ないのか…。

 

「あら、ビクトールにフリック?ここ、貴方達の砦だったの?」

 

そう、ホントに変わった事態だ。

まさか、トランでの戦争で戦友であったこいつに、再び会うとは思わなかった。

星の導き…。

 

柄にもない言葉を使ってしまいそうなほど、びっくりする事態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かにこりゃ、物好きな女だな。」

「物好きな女って…。何の話?」

 

俺の部屋にとりあえず通した女…は、先のトラン解放戦争の戦友。

茶を啜りながら、ビクトールの言葉に首を傾げている。

 

「さっき、兵から報告を受けた時にビクトールが言ってたんだ。」

「まぁ。好奇心旺盛って言ってくれた方がいいわ。」

 

再び、つい先刻聞いた事のある言葉が出て、ふっと笑ってしまう。

 

「にしても、。お前は確かリーダーんとこに世話になってたんじゃなかったのか?」

「ええ。でも…もうそろそろ旅に出ようかと思って。

 クレオはいい子だし…あそこにいたら自分が甘え過ぎてしまいそうだもの。」

 

旅に出るにはいささか少なすぎる荷物。

そう、一番最初に出会った時もは軽装だった。

 

 

 

 

『貴方達が赤月帝国の反抗勢力ね?』

『お前は何者だ!?』

『高らかに名乗るほど立派な名は持っていないわ。

 …流浪の旅人、…。と呼んで頂戴。そのほかには何も持っていないわ。』

 

 

 

 

 

 

「そう、ミューズに雇われているのね?」

「雇われてる…っつーか、同盟みたいなもんか。」

「…やはり、ハイランドとの問題なのね。」

 

2杯目のお茶をカップに注ぎながら、は厳しい顔をする。

 

「どこもかしこも戦争は絶え間ないけれど…ここは急務って感じがするわね。

 第一に、狂皇子とも呼ばれるハイランドの獣、ルカ・ブライトの存在…。

 第二に、都市同盟郡の不和。これは多数の要因が重なってるわ。」

 

はこの土地の情勢を調べ尽くしてきたのか、俺達が把握している事、

それから、まだあやふやな情報までもたらした。

 

「不和は、マチルダ騎士団長ゴルドーの権力への執心、グスタフが市長のティントは

 古くからグラスランドのクランと諍いが絶えず、グリンヒルはアレク・ワイズメルの

 死後、娘のテレーズが未だに市長代行という半端な情勢。トゥーリバーは市長のマカイ、

 ウイングボード自治区のスースー、コボルト自治区のリドリーと、権力分散が起こって

 纏まらず。サウスウインドウのグランマイヤーは穏健派で保守が過ぎる。

 これではいかに有能といわれるミューズのアナベルが頑張っても一人相撲に終わるわ。」

 

問題点は外からのほうがより鮮明に見える、というのはまさにそうだ。

すらすらとの口から零れる言葉に、頷くしかない。

 

「それから…私が旅立つ先を決める時、一番にこの地の名が上がった。

 それが最も危険な兆候だと思ったの。」

 

少しだけ、哀しい響きを持った彼女の声が染みる。

 

「フリック。」

「…何だ?」

 

突然名を呼ばれて驚きながら返事をすると、くすりとが笑う。

 

「やっぱり、私の力は恐いかしら?」

「…いや、そういうわけじゃない。」

「ふふ…じゃあそういう事にしておきましょう。」

 

小さく微笑んだ彼女だったが、次の瞬間に驚いたような顔を見せる。

 

「あのう、フリックさん、ビクトールさん、少しいいですか?」

「お?か。入っていいぜ。」

 

ついこの間助けたハイランドの少年兵だという

一応捕虜という形で身柄を預かっているが、砦内の自由な行動は許してある。

 

「…ビクトール、フリック。この子は…。」

「ああ、だ。一応、捕虜だな。」

…くん?」

「あ、はい。」

 

じっとを見るの目は…まるで。

リーダーを。

トラン解放戦争の立役者であり、真の27の紋章の一つ、「生と死を司る紋章」

通称、ソウルイーターの持ち主、・マクドールを見る目にそっくりだった。

 

「よろしくね。私はこ二人の知り合いのよ。」

「はい。」

「…真っ直ぐな瞳ね。きれいな輝きをしてる。」

 

にっこりと微笑む彼女。

 

きっと、身体も心も軋む重圧。

 

俺が知るあの女‐ヒト‐とは違うけれど、同じく強い重圧。

 

 

 

星の定め。

 

 

 

恐ろしいくらいに俺達を操るその糸が、再び気まぐれな神の手に委ねられたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

はい、オムニバスドリ第二弾・フリックです。今回は序盤も序盤ですね。

どちらかというとヒロインの謎解きのような感じになりました。勘の良い人はもう

分かりましたよね。書いていて思ったんですが、矢張りオデッサ強いなぁ(笑)

でもドリだからごめん!忘れていただきマス(笑)次はルック辺り行きますかね。

私が書けるのって少ないなぁ〜…ジョウイばっかり見てるから(爆)

 

 2005・12・13 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

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