彼女は、自分とは違う。

諦める事無く、ただ前へ。

 

 

…運命の中で。

 

 

 

定められていても、その中で輝き続ける、

 

 

 

愚かで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とても愛しい光。

 

 

 

 

 

 

 

 

Under The sky

    翠碧色の扉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、会ったわね。」

そう言って挨拶をしてきた彼女は、三年前と寸分違わぬ笑顔を見せた。

 

「そうだね。僕は別に会うつもりはなかったんだけど?

 お師匠様に言われたからね。」

「ふふ…いまだにレックナートさんには勝てないのね?

 三年経って少し変わるかと思っていたけれど。」

「そういうこそ、全く変わってないよ。」

「ありがとう。」

 

さらりとそう礼を述べる彼女が、嫌いだ。

僕のすべてを見透かしているような、彼女が大嫌いで仕方がない。

 

さん、少しよろしいですか?」

「あら、アップルちゃん。どうしたの?」

 

副軍師のアップルが少し小走りでやってきてに声をかける。

三年前にも出会ったメンツ。

そう、星の導き…っていう陳腐なもので。

 

でも、その運命から相変わらず逃れられないでいる僕がここにいる。

 

「ルック、貴方も一緒に来てほしいの。シュウ兄さんが呼んでるの。」

「へぇ、軍師様が僕をね。何の用か知らないけど、短時間で済むなら

 行ってあげてもいいよ。」

 

相手の顔に苦笑が浮かぶ。僕にそう構って来るな。

僕に関わっても、何もならない。

 

 

 

 

むしろ、失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真の紋章をこの身に宿した、永久なる命を持つ僕だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殿、ルック殿。ご足労ありがたい。」

「ホントにね。用件は手短にお願いできる?」

 

僕が椅子に座ってそう言うなり、シュウは一枚の走り書きを見せた。

 

 

「ルック殿、貴方の紋章の能力を見込んで、次の戦でお願いがあります。」

「…兵力の分散?」

「ご名答です。次の戦において、間者からの情報によると、

 第三軍、第四軍、それから白狼軍の補給隊が出陣するとあります。

 その白狼軍の中に、ハルモニアから召集した、ササライなる神官長がいます。」

「…ササライ…。」

 

 

嫌な名前を聞いた。

本当に、因縁というものがおぞましくて仕方がない。

 

 

これも星の導き?

 

 

「知り合いだと…おっしゃっていましたよね?」

「ああ、嫌なぐらいね。…で、そいつを退けろって?」

「はい。」

「さすが軍師殿。相手の事情を慮って…とか言うのはないわけだ。」

 

僕がそうして皮肉ってやると、大体二の句が告げなくなる…。

 

「慮ろうとしているからこそ、貴方の隣には殿がいらしているのですよ。」

「…ルックが拒否した場合、私がその任を負う、という事ね?」

 

静かな二人の声が僕に返ってくる。

 

「……分かったよ。仕事はきっちりやるけど、終わったらさっさと

 退却させてもらうよ。汗かくの嫌いだから。」

「分かりました。ではルック殿に充てている兵で精鋭を数人残し、後は

 殿の隊として編成しなおすように。アップル。」

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ああいうこと、よく言えるね。」

「ああいう事って?」

「…は、自分の紋章を使うことに何の抵抗もないんだ。

 能天気でいいね。」

 

石版に寄りかかりながら僕がそう言うと、

は小さく笑ってから高い天井を見上げた。

古めかしいシャンデリアが、さんざめき主張しながら揺れている。

 

 

「能天気…なのかしらね。もしくは、麻痺してしまったのかもしれないわ。

 永い時の中で、私の生きている間は一瞬間の出来事でしかないけれど。

 その時の流れが止まるのは誰しも怖いはずなのに。」

 

はゆっくりと自分の右手を撫でながら微笑んだ。

 

 

「この紋章が、他の人の手に渡ることのほうが私は恐ろしくて仕方ないの。

 私が持っていて過ちがないとは言い切れないけれど…。

 少なくとも、ルックよりは分かっているわ。」

「へえ、ずいぶん自信があるようだね?」

 

僕がからかう口調で言うと、

 

「覚醒の紋章。未だに暴発するんでしょう?」

「!!」

「普通の人が覚醒の紋章をつけて紋章を発動すれば、暴発はよくあること。

 でも、貴方ほどの使い手が、普通の紋章を発動して暴発するのは…。」

 

僕はそれ以上聞きたくなかった。

 

 

「…また、怒らせちゃったわね。」

「…ホント、人を不快にさせる名人だよ、は。」

「そうね…ルック限定…かしら?」

 

柔らかな苦笑を浮かべると、は身を翻した。

 

「ルック。自分を追い詰めないで。永久の命がもたらす物は、

 悲しみや無念だけじゃないはずよ。…ティルにも、リオウにも

 それを見てきたでしょう?」

 

そんなに大きな声ではないけれど、響く声が僕の耳に届いた。

 

にもそういうものが見える。

 

 

強大な力を持っていてもなお、元来の明るさを失わない君。

多くの希望や想いを信じて、掛け値なしで全ての行動を決めてしまう君。

そうだ。だから、君が嫌いなんだ。

 

 

僕を根底から崩してしまいそうな…。

 

 

輝く程の君が羨ましくて…惹かれているから…。

 

 

 

 

僕は、君が。

 

 

 

誰よりも嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

オムニバスドリム第三弾のルック編が出来上がりました。この子は本当に難産でした。

性格ひねくれすぎーやっちゅうねん。(笑)さて、ヒロインは真の紋章持ち、

って言うことがお分かりになりましたでしょうか?そうです、今回は「半永久」の命を

持つヒロインちゃんのお話です。次のお相手はどなたにしませうか…。

ジョウイの続きか、他の人か…。

 

   2006・2・3   月堂 亜泉   捧

 

 

 

 

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