「…っ。」

 

オレは小声で、隣に座る幼馴染の名前を読んだ。

 

「…何?」

「ちょっとさ、席外していい?」

「…どうしたの?」

 

「足…痺れた…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

わびさび

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーっ!痛い痛い!っ!!もーちょい優しくして!」

「そんなに力入れてないってば。」

 

やっと正座から解放されたはいいものの、オレの足は電気をず〜っと流してるように

びりびりと痺れている。それをがマッサージしてくれてるんだけど…。

 

 

痛いんだよぉっ…これが。

 

 

「うぅ〜っ、は大丈夫にゃの〜?」

「うん。もう正座慣れしちゃったし。」

 

にこっと笑ってぺんぺん、と足を叩く。

確かに、全然痺れてないみたい。今も正座したまんまだし。

 

「オレだめかも。やっぱコートで動き回ってるほうがいいもんね〜。」

「あははっ。その方が英二らしいけどね。」

「やっぱもそう思う〜?」

 

「私はメリハリかな。動くときはわーって動くんだけど、

 部活のときは大人しく茶を立ててるって感じ?」

「なるほどにゃ。」

 

今日はの部活に付き合って大人しく廊下で待ってたんだけど、

先生が「菊丸くんもいらっしゃい」って言うから、

ちょっとだけお茶室に入ったはいいものの、ちょっとの時間でオレの足は限界を訴えちゃったんだ。

 

 

 

 

 

「そうだ。明日のこの時間って暇?」

 

湯たんぽでオレの足を暖めながらマッサージしてくれていたがふと手を止めて、

オレにそう尋ねてきた。

 

「明日?って第2日曜日だから…ん〜。大丈夫だと思うけど、何で?」

「うちの家で小さなお茶会をやるの。で、そこで私が主人をやるから、英二にも来て

 欲しいなって。そんなに長い時間じゃないし、英二は特別扱いで他の人と時間ずらして

 やるから、正座しなくてもいいし、くつろげるし。どう?」

「ふ〜ん。面白そうかも。うん、行く行く!」

「ホント?」

 

嬉しそうに笑うの表情が、オレは昔から大好きだから、こうして一緒にいる。

足が痺れただけでも、こうやって治るまでマッサージしてくれたりする優しい

昔から変わらない、可愛い、大好きな幼馴染。

 

『幼馴染』ってついちゃうのが、歯痒いんだけどね、オレは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、いらっしゃい英二くん。」

「こんにちは、叔母さん。」

 

お母さん似の。叔母さんはいつも和服で、すごく綺麗なお母さんって感じ。

将来、もこんな美人になるのかと思うと、それだけで何かドキドキする。

 

なら、奥の部屋にいるわ。」

「あ、うん。」

 

 

典型的日本家屋、って感じの家。

前に手塚の家に行った時、つい、の家みたいだな、なんて思ったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥の部屋の障子を開けると、俺は言葉に詰まってしまった。

 

「あ、英二。どうぞ座って。」

 

綺麗な水色(が言うには、浅葱色っていう日本古来の色らしい。)の着物を、

着こなしているがそこにいた。

 

普段は高めに結った黒い髪の毛が今日はおろされて、背中に流れている。

袖から出る腕は驚くほど細くて、白く透き通っているように見える。

 

「どうしたの?」

「え?あ、なんでもにゃいよん。ここ、座っていいの?」

「うん、いいよ。」

 

何だか、普段見なれないの姿に妙に緊張して、オレはつい正座をする。

その様子を見たがくすっと笑った。

 

「足、くつろげていいのに。」

「あ、そだね。」

 

オレは足を伸ばして、ふう、と小さく息を吐く。

 

は早速お茶を点てはじめた。

シャカシャカという音が妙にこだまして、

今、この部屋に2人きりでいるんだという事が、妙に意識される。

 

「英二?」

「え?」

「なんか今日、変だね?何か予定でもあった?」

「そっ、そんなんじゃなくて…。」

「ならいいんだけど…。」

 

また、沈黙。オレはずっとの手元ばかりを見ていた。

 

茶筅を置いて、の手が違う動きを見せる。

すっとオレのほうに出された手から、目線を上げる。

 

まるで、全然知らない人みたいだ。

 

ずっと変わらないなんて、ウソだ。

オレが、気付いてなかっただけなんだ。

 

は知らないうちに、綺麗な女の人になっていたんだ。

 

 

 

 

 

 

(渡したくない…。)

 

 

 

 

誰にも。

 

 

 

足が痺れたみたいな感覚を、胸のうちに感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

俺がの手を取るまで、あと数秒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

うわっ、うわっ、ヤバッ…駄文―――!!!!ヒドイデスネ。アンマリデスネ。

ヒロインは茶道部さんです。そして幼馴染ホントは茶室のシーンを書こうと思ったけど、

やめました。その通りに書いてったら、菊がセクハラオヤジに…げふん。

やっぱり菊は書きにくいです。「にゃ」の少ない菊になるんだよな…う〜ん……。

 2004・3・13 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

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