今の生活は、かけがえのないものだから。

 

ヤキモチ。

 

 

 

ロッカーを開けると、急に落ちてきたものがあった。

 

「痛っ…。」

「どうしたの、淳?」

 

俺の彼女でもある、聖ルドルフ男子テニス部のマネージャー、

 が心配そうに覗きこんできた。

 

「平気平気。ちょっとラケットが落ちてきただけだから。」

「あれ?でもこれ、淳のラケットとは違うよね?」

「ううん、俺のだよ。」

 

今じゃ少し珍しい、ウッドラケット。

 

「前の学校で使っていたやつ。」

「へえ…重たくない?」

「ううん。まあ、今使っているのと比べるとちょっと重いかな。

 だけどこれ、俺用に作ってあるやつだから、結構使い心地はいいんだよ。」

 

何だか懐かしくなって、ラケットを素振りしてみる。

今だ俺の手にフィットするこの感覚は、忘れようもない。

 

「六角中、だっけ。淳の前の学校。」

「うん。そうだよ。」

「…楽しかった?」

「まあ、ね。楽しかったのかな。少なくとも、今よりは気楽だったと思うけど。」

 

の表情が曇る。それは、ほんの少しの変化だったけれど。

 

「…どうしたの?」

「ううん、何でもない。あ…観月君に呼ばれてたんだ。じゃ、また帰りにね。」

「…うん。」

 

コートへ走って行くの背中が、何だか寂しげだったのは気のせいじゃないんだろう。

 

 

 

とはいえ、練習中は観月の徹底スパルタ練習のおかげで話しかける事もままならないから、

気にしつつも俺はどうすることも出来ずに帰りを待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「淳、帰ろう。」

「うん。ちょっと待ってて。」

 

ラケットバックを持っての元へ走りよる。

はボーっとどこかを見ていた。俺はの目の前で手を振る。

 

「…?」

「え?あ、うん、帰ろう。」

 

やっぱりどこか様子がおかしい。

朝一緒に登校して来た時はいつも通りだったはずなのに。

 

「ねえ、淳…。」

「ん?何?」

「…いいや、やっぱり何でもない。」

 

歯痒そうな顔をしてから俯く

 

「どうしたの?言いかけて途中で止めるなんてらしくないよ。」

「うん…。」

 

暫く沈黙が続く。

 

目の前の信号が青点滅を始める。

いつもみたいに慌てて走ることもせず青点滅を見送り、俺とは立ち止まる。

 

自転車で走ってゆく小学生や、買い物帰りの主婦が俺らなどこれっぽっちも気に留めず

自分達の家へと帰ってゆく。

いつも通りの風景のくせに、なぜか無情だと感じるのは、の寂しそうな横顔のせい

なんだろうか。

 

「…淳。」

 

青信号に変わり、他の歩行人もぞろぞろと横断歩道を渡りはじめる中、

ふいにが話しかけて来た。

 

「…何?」

「…東京ってごみごみしてるでしょ?」

「そう…かもね。ちょっと人は多すぎるかな。」

「…戻りたい?」

「どこへ?」

「……六角中。」

 

その言葉で、俺はどうしてが塞ぎ込んでいるのか分かった。

 

「懐かしいなあ、とは思っても、帰りたいと思ったことはないよ。聖ルドルフに来たの

 だって、最終的には俺の意思な訳だし。」

 

無意識につま先で蹴った石が、側溝の溝に落ちる。

聞こえたはずの水音は、人のざわめきにかき消された。

 

「六角中では味わえない事、こっちで色々経験してるからね。確かに向こうのやつらも、

 個性的なやつが多かったけど。こっちの方が遥かにずば抜けてる感じはするしね。

 毎日観月に扱かれてはいるけど、自分が強くなってるって分かる。それに。」

 

俺はの前に回り込んで、

 

に出会えて、よかったと思ってるんだから。」

「っ…。」

 

顔を赤く染めるが可愛らしくて、僕はつい微笑んでしまう。

 

「俺、がいなかったら諦めてたかもしれないって時が何度かあったよ?

 挫折しそうになるたび、は優しくしてくれたじゃない。すごく俺の支えになってたって、

 分かってる?」

「淳…。」

「六角中もいいけど、俺はのいない生活なんて、もう考えられないから。

 だから、いいんだよ、は。俺を拘束する権利、十分あるから。」

 

の綺麗な髪をすっと梳いて、

 

「たまには我侭言って。俺だって、の我侭聞いてあげたい。」

「……うん。」

 

は俺のラケットバックをきゅっと掴んで、

 

 

 

「…ずっと、一緒にいてほしんだ…。」

 

 

 

小さく言った、可愛らしい我侭。

 

「うん。ずーっと、一緒にいるよ。。」

 

はその言葉を聞くと、嬉しそうに微笑んで俺の手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは同じ道を歩いて行こう。

 

 

 

 

この手が離れない様に、と願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

あっちゃーん!!(叫)書き始めた当初は調子よかったくせになんだこの終わり方!!!

やっぱり思いつきの賜物ってやつ?(殴)あっちゃんは好きなんです!ルドでは観月の

次ぐらいに!でも難しい…。あっちゃんて登場回数少なっ!!つかルドって酷い扱い

うけてますからね…。氷帝にあっさりやられる…どころか!!その試合さえもしっかり

書かれてませんし!!うわーん、何なんですか許斐先生!!ルドが嫌いなんですか!!

(興奮気味。)あー…それより何より私はもっと文才を磨きませう。(文才ないけど。/泣)

 

 2003・3・7 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

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