約束の香り

 

 

「…一番後ろ、ですか。」

 

朝のHRに、くじ引きで席替えをした。

僕が引き当てたのは一番後ろの席の番号。

みんながガタガタと机を移動させるのを合図に、僕も机を移動させる。

 

「あ、隣ってはじめだったんだ。」

 

隣の席にちょこんと座っていたのは 。僕の従兄妹。

 

、この席で見えるんですか?」

「んー、多分見えない。」

 

目を眇めて黒板のほうを見るを見て、僕は微笑する。

 

「前の誰かと代わればいいじゃないですか。後ろに行きたい人なんてごろごろいますよ。」

「いいよ、眼鏡かければ見えるだろうし、それに、せっかくはじめとお隣さんなんだもん。」

 

にこっ、と無邪気な笑顔を向ける

 

 

 

そういう…無防備な行動がいけないんですよ。

 

 

「それに、ほら、お勉強教えてもらえるし。」

「そんなものはちゃんと授業を聞いてさえいれば出来ます。」

 

思わず、心の中で胸をなでおろす。

 

そう…僕の心の中にいつのまにか住みついていた「恋心」

 

それが向く方向は、のほう。

 

 

昔も…今も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁくん、あそぼぉー。」

 

親戚の多い僕の家で一番良くやってきたのは、父方の妹夫婦だった。

その子供が、だった。

 

「何して遊ぶ?」

「んとね、おままごと!」

「また?」

「うん!だって、はぁくんはあたしのお婿さんになんだよ?」

「逆だよ。」

「逆?」

「…僕が、ちゃんをお嫁さんに貰うんだから。」

 

 

 

 

 

 

あの頃から、ずっと。

 

彼女に惹かれていた…いや、惹かれ続けている。

 

 

 

 

多分、これだけおっとりしているは忘れているだろうけれど、

僕の中ではしっかり息づいてしまっている「約束」。

 

 

 

 

 

 

「…えーと…?…はじめ、ちょっとここ教えて?」

「どこですか?」

「5問めの3番の問題。」

「…これはですね、2番で導き出された答えを左辺に置いて…。」

 

が、問題を教えてもらうために僕の机のほうに身を乗り出す。

 

 

すると、ふわっと爽やかな香りがした。

 

 

おそらく、のつけている香水の香り。

香水の香りはあまり好きではないけれど、嫌味のない、本当に彼女に合った香水を

ほのかにまとっているおかげで、僕にも好感が持てる。

 

「…という事ですよ。分かりましたか?」

「あ…なるほど〜。ありがと、はじめ。」

 

すっと身を引くと、残り香が芳しく僕の周りを包む。

少しだけ名残惜しく思いながら、胸の高鳴りが治まってくれるのを待つ。

 

「えーっと…これがこうで…。」

 

は集中力がすごい。一度物事にのめりこんでしまったら、何度か呼んだくらいでは

まず気付く事はない。

僕はそれをよしとして、の横顔を見つめた。

 

「美人」とは少し違うけれど、全体的に整った見目をしている。

どちらかというと、幼さの残る「可愛い」感じ。

少し癖のある黒髪に、色白の肌。

 

昔から変わる事のない、僕の…好きな人。

 

 

 

 

「起立ー、礼ー!」

 

授業が終わり、僕が帰る支度をし始めたとき、

 

「はじめ、今日部活ないんだよね?」

「ええ、そうですが?」

「じゃあさ、一緒にお買い物ついてってくれない??」

「え?」

 

そうではないと分かっているくせに、頭の中では勝手に『デート』と変換される。

 

「あ、安心して。荷物持ちとかじゃないから。」

「…いいでしょう、行きますよ。」

「ホント!?ありがとう、はじめ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が立ち寄ったのは、あるデパート。

 

「で、今日は一体、何を買いに来たんです?」

「んとね、香水。」

「香水、ですか?」

「うん。そろそろ無くなっちゃうから、買っておこうと思って。」

 

香水のコーナーにつくと、さまざまな形状をした壜が、ショーケースに並んでいた。

 

「こうやって、壜が並んでるだけでも可愛いよねー。」

 

テスターの匂いを嗅ぎながら、にこにことご機嫌で話す

 

「ひょっとして、何を買うか決まってないんですか?」

「そういうわけじゃないんだけど。たまには気分転換して別のをつけようかなって。」

「…いいんじゃないですか?今の香水で。によく似合っていますよ?」

「ホント!?」

 

くるっと振りかえって、瞳を輝かせる。

僕が「ええ。」と返事すると、嬉しそうに微笑った。

 

…僕がそんな何気ない仕草にときめいているのを、知らないんでしょうね。

 

 

「…オッケー。付き合ってくれてありがとね、はじめ。」

「いえ、あれぐらいの事ならいつでも言ってください。」

 

一歩、一歩、寮が近づいてくる。

その道が惜しくて、僕は少しだけ歩調を遅くする。

 

「…ねえ、はじめ?」

「何です?」

「本当に、この香水、私に合ってると思う?」

「どうして、急にそんな事を聞くんです?」

 

いつも明るく穏やかなにしては珍しく、表情が翳る。

それでも、その憂いがの魅力を増しているように見える。

 

「…何でもない…。今日はありがとね、はじめ。じゃ、また明日!!」

 

 

走って行く、の後ろ姿。

その影が、こちらに長く伸びている。

 

まるで、の心が名残惜しそうにしているように。

 

それでも、僕はどうしてやることも、出来なかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

ええっと…なんか続いちゃいますぜ、これ…(汗)1話完結のはずだったのに!?

最近どうにも話がだらだらと長くなってまとまりに欠けますね…。困ったなぁ…。

しかも、この話なんだか観月が可愛い気がする。何ででしょう??最近テニキャラみんな

可愛い、と見てるからでしょうかね?(老けたのかな、自分/泣)早く後半書こう…はい。

 2003・11・27 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

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