僕は、記憶力がいい方だと思う。

忘れている事はたくさんあるけれど。

 

でも、これだけは、忘れてはいけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

約束の香り

 

 

 

 

 

 

あの日から数日が経った。けれど、の様子は相変わらずで。

僕はさほど気にしなかった。

だから、その記憶は意識の片隅に置く程度のものになっていた。

 

その日は探し物をするため、クローゼットを全開にして荷物を取り出していた。

 

「ゴホッ…。埃が…っ…。」

 

ほんの数ヶ月の間に、随分と埃がたまっていた。

僕は掃除をしつつ、クローゼットの中の荷物の一つを出した。

 

「おや…?」

 

見覚えはあるけれど、何を入れてあるのだか忘れてしまった箱が一箱。

 

布巾で丁寧に埃を取って、そっと開ける。

防虫剤の匂いと共に、出てきたのはアルバム。

しばらく開いていなかったせいで、フィルムがくっついてパリパリと鳴る。

 

「懐かしい…幼稚園の頃の写真からありますね…。」

 

まだまだ幼い、自分の写真。

“昔の自分”と対面しているような、不思議な気持ち。

 

…。」

 

幼稚園のときの、の写真。

大きな瞳がきらきらとして、美しい髪が遊んで。

この頃から十分に可愛らしくて魅力的だった。

「はぁくん」と、高くて澄んだ可愛い声で呼んでくれていた。

 

…そういえば、いつの頃から、彼女は「はじめ」と呼び直し始めたんだ…?

 

「ん…?」

 

アルバムからはらりと落ちたのは、一枚の画用紙。

そこにはひらがなでたどたどしく、クレヨンで「誓約書」と書かれていた。

 

 

せいやくしょ

わたし、 は、観月 はじめのために、だれよりもきれいで

りそうてきなじょせいになります。

お姉ちゃんにもまけない、すてきなひとになって、およめさんになります。

 

 

「そう…言えば…。」

 

ふと、思い出した。

 

彼女との、もう一つの「約束」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁくんって、どんな風なお嫁さんが欲しいの?」

 

その時の僕は、「」と言えばいいものを、照れくささに

 

のお姉さんみたいに、綺麗でいい香りのする人。」

「…いい香り?…お姉ちゃん、『こうすい』つけてるからかな…?」

も、つけてみたら?」

「うん…。でも、お姉ちゃんは、もっと大きくなったらって言ってたの…。

 じゃ、私がおっきくなったら、ぜったいつけて、はぁくんをおどろかせてあげる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…は。」

 

香水の事を褒められて、あんなにも喜んでいたんですね。

 

…全く、可愛らしい人なんですから。

 

健気でいじらしいを、ますます愛しく思ってしまう。

僕の手は自然、携帯電話に伸びる。

 

『もしもし?』

、ちょっといいものを見つけたんで、僕の部屋に来ませんか?」

『なになに??』

「それは来てからのお楽しみです。どうです?」

『そこまで言われたら行くっきゃないでしょ。ちょっと待っててー♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電話を切ってから数分。

ドアのチャイムが鳴り、少しだけ息を弾ませたが来た。

 

「そこまで急がなくても良かったんですけどね?」

「だって、気になるじゃん!」

 

僕はに座るよう促して、紅茶を入れるためにミニキッチンへ向かう。

 

「あ、これってアルバム?うわー、懐かしい。」

「そうですよ。」

 

僕はいつも通りに返事をしながらも、内心はどきどきしていた。

幼い頃に感じた、イタズラをする前のわくわくした気持ちによく似ている。

 

 

 

「あれ?」

 

気付いた。

 

それをじっと読む

 

紅茶をそっと置いて見守る僕。

 

それに顔をうずめ、少し震える。

 

 

「…は…はははっ…。」

 

?」

 

 

「バカなんだから…はぁくんってば…!!」

 

 

 

 

首に抱き着いてくる

僕はその細い身体を抱きしめ返しながら、

 

 

 

 

 

 

 

「昔から、ずっと…だけが、好きですよ。」

 

 

 

 

 

の書いた、昔の誓約書と共にアルバムに挟んだ誓約書。

 

 

 

 

 

 

その誓いは、芳しい香りと共に、思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誓約書

前記誓約書において交わした約束の訂正と、追加について。

既に、出会った頃より誰よりも綺麗で理想の女性である 

 

観月 はじめは、 を妻とし、愛し、守りつづける事を誓います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後足掻き

うわぁ…上手くまとまらない(汗)どうしてここまで上手く行かない?(文才無いから。)

書いてて切なくなりました。いろんな意味で。墓場に送ろうかなぁ(泣)

勢いで書かなかったのもまずったですね〜…。いや、勢いで書いててもダメか(苦笑)

えっと…言い訳し始めると止まらなさそうなので止めます。苦情はBBSにでも…。

 2003・12・13 月堂 亜泉 捧

 

 

 

 

 

 

 

 

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