その日がきっかけ。
…いいえ、多分前から惹かれていたんでしょうね。
ただ……気付かないようにしていただけで。
揺れるは……。
「まったく…またこのお客さんですか。」
車掌になって以来、ずっと見かける女子高校生。
テニスラケットを所持しているあたり、テニス部なんでしょう。
ただ、いつも疲れて眠ってしまうんですよね。
この人、そんなに車庫に送られたいんでしょうか?
えっと、
さん?
ふぅん、なかなか可愛らしい名前じゃないですか。
顔も悪くないですし。
「お客さん、終点ですよ。」
「んん…え…あ!嘘ぉ!」
嘘をついてどうするんですか。
でも、その反応が何だか可愛らしく見えますね。
「すいませんっ、すぐ降ります!」
「とは言っても、反対車両がくるのは約一時間後ですよ?」
何せ田舎ですからね。電車を使うより小回りの出来る車のほうが便利なんですよ。
「う゛…。どぉしよぉ…。」
はあ…仕方ありませんね。
「僕、これから帰りなので、よろしかったら乗せますけど。」
高校生ともあれば見知らぬ人にこう言われたら、警戒してしまうでしょうに。
「いいんですかあ!?」
人を疑う事、知らないんでしょうかこの人は…。
「…いいですよ、さん。」
「それにしても、何で私の名前を?」
車に乗ってから数分。
沈黙に耐えられなくなった風に、さんが話し始める。
僕の名前は、制服についた名札を見ればわかりますが。
さんも十分分かりやすい名札、つけているじゃないですか。
「その名札を見たらだれだって分かりますよ。」
「あ、そっか。これですか?可愛いですよね、アヒルさん。」
鞄につけられた、アヒルを模した名札。
「アヒル…。」
懐かしい人を思い出しましたね。
あのだーね星人。
まあ、あれは可愛くないですけど。
「???…どうしたんですか?観月さん。」
「いえ…テニス、楽しいですか?」
「えっ?あっ、はい!」
何の淀みもなく、屈託のない笑顔で即答する。
「そうですか。」
「観月さんも、テニス好きなんですね?テニス選手だったとか?」
にこにこと嬉しそうな瞳で、僕の瞳を覗きこむさん。
なぜ、分かるんでしょう?
「…どうしてそんなことを?」
「え?違いましたか?…テニスの事を言った時に、凄く優しい顔したからてっきり…。」
優しい顔…?
そんなつもり、ないんですが…。
でも、
「いいえ、間違ってません。確かに…好きですよ。」
瞳を捉えて、一言一言をはっきりと言う。
おや。赤くなっていますね。
んふっ。可愛らしい人ですね。
「あ、ここでいいです。今日は本当にありがとうございました。」
「いいえ。」
そっと、呟く。小さな声で。
「貴女に、興味が沸きましたよ。」
「え?何です?」
「何でもありませんよ…今度は、寝過ごさないでください。」
照れて顔を赤くする姿も、可愛らしいですよ…。
「それじゃあ、また。」
また、逢うでしょう。
明日の電車でも、明後日の電車でも、ずっと。
その度、僕は笑いかけるでしょう。
まずいですね。
テニス以上に、好きなものを見つけてしまったようです。
貴女という、女性を
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
後足掻き。
またもや観月ドリです。えこひいきしてます。
これは私が電車に揺られているときに考えついたやつです。
疲れてたんですね。はい。
あー、このまま寝たら観月が迎えに来てくれないかなー、何て考えてて(苦笑)。
修行しまっす。はひ。
2002・10・13
2002・11・11改 月堂 亜泉 捧
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